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慶應理工2016

2016年慶應大学理工|過去問徹底研究 大問4

慶應義塾大学過去問徹底研究 2016年 大問4

方針の立て方

(1)
実際にkに小さい順から値を代入して確かめてみることで,方針どころか答えが得られる.

(2)
この問題の困難の一つは未知数が多いことである(a,b,k).まずはこの未知数を減らしたい.事実Fを用いればaを消去できると考え,早速事実Fを用いる.この問題では,整数kが任意であることに注意したい.また,複素数の累乗を見たらド・モアブルの定理を疑うことは基本解法としておさえておきたい.その後,mを動かすことで答えが分かる.

(3)
複素数の累乗を見たらド・モアブルの定理を疑うという基本解法,三角関数は2\pi周期の関数であることから方針を得る.その後は,分数の厄介さを解消するために分母を払うこと,更に,a,bが互いに素であることから,1次不定方程式に持ち込むことを考えたい.

(4)
(2)と問題設定が似ているため,(2)の結果を用いたい.その後は素直に集合Q_1の要素と集合Q_2の要素を掛け合わせたものを考えていけばよい.2\left(\frac{k_1b_2+k_2b_1}{b_1b_2}\right)\piの範囲を考えれば,重複を考える必要があると分かる.b_1b_2が互いに素でないときは,\begin{cases}b_1=db_1^\prime\\b_2=db_2^\prime\end{cases} (b1',b2'は互いに素な整数)と書けることは頻出の解法のためおさえておきたい.

解答例

(1)
ツ:3
(2)
テ:b
(3)以下、解答
2akbπ=2πb+2nπ (nは整数)となるkが存在すれば必要十分.
\frac{2ak}{b}\pi=\frac{2\pi}{b}+2n\pi\Leftrightarrow ak=1+nb\Leftrightarrow ak-nb=1
abは互いに素であるから,この1次不定方程式を満たす整数の組\left(k,n\right)は存在する.
証明終了.
(4)
ト:b_1b_2
ナ:\frac{b_1b_2}{d}

解説
(1)
k=1,2は,自明に不可.
k=3のとき,
\left(\cos{\frac{4}{5}\pi}+i\sin{\frac{4}{5}\pi}\right)^k=\cos{\frac{12}{5}\pi}+i\sin{\frac{12}{5}\pi} (ド・モアブルの定理) =\cos{\frac{2}{5}\pi}+i\sin{\frac{2}{5}\pi}
よって,求めるkは3……(答)

(2)
事実Fから,
P={z|zは整数mを用いて\left(\cos{\frac{2}{b}\pi}+i\sin{\frac{2}{b}\pi}\right)^mと表される複素数
となる.
z=\left(\cos{\frac{2}{b}\pi}+i\sin{\frac{2}{b}\pi}\right)^m=\cos{\frac{2m}{b}\pi}+i\sin{\frac{2m}{b}\pi}は,m=1,2,\cdots\cdots,bのそれぞれの値に対して,異なる複素数となるが,それ以外の整数については,m=1,2,\cdots\cdots,bのどれかの整数を代入した複素数と同じ複素数となる.
\therefore n\left(P\right)=b……(答)

(4)
(2)と同様に考えると,
Q_1={z|zは整数k_1を用いて\left(\cos{\frac{2}{b_1}\pi}+i\sin{\frac{2}{b_1}\pi}\right)^{k_1}と表される複素数}
Q_2={z|zは整数k_1を用いて\left(\cos{\frac{2}{b_2}\pi}+i\sin{\frac{2}{b_2}\pi}\right)^{k_2}と表される複素数}
であり,
n\left(Q_1\right)=b_1
n\left(Q_2\right)=b_2
である.
b_1b_2が互いに素であるとき
\left(\cos{\frac{2k_1}{b_1}\pi}+i\sin{\frac{2k_1}{b_1}\pi}\right)\cdot\left(\cos{\frac{2k_2}{b_2}\pi}+i\sin{\frac{2k_2}{b_2}\pi}\right)=\cos{2\left(\frac{k_1b_2+k_2b_1}{b_1b_2}\right)\pi}+i\sin{2\left(\frac{k_1b_2+k_2b_1}{b_1b_2}\right)\pi}
ここで,k_1=1,2,\cdots\cdots,b_1k_2=1,2,\cdots\cdots,b_2の範囲で考えると(この範囲のみで考えても,Q_1Q_2の全ての要素を考えつくしたことになる),0<k_1\leqq b_10<k_2\leqq b_2より,
0<2\left(\frac{k_1b_2+k_2b_1}{b_1b_2}\right)\pi4pi
となる.よって,Q_1Q_2の異なる要素の組を掛け合わせたとしても,その積に重複が生じる可能性があると考えられるが,以下では,その重複が存在しないことを示す.
そのために,
\frac{k_1b_2+k_2b_1}{b_1b_2}=\frac{k_1^\prime b_2+k_2^\prime b_1}{b_1b_2}+n (n=0,1) \Leftrightarrow \frac{k_1-k_1^\prime}{b_1}+\frac{k_2-k_2^\prime}{b_2}=n
となる整数の組\left(k_1^\prime,k_2^\prime\right)を考える.
上の方程式を満たす\left(k_1^\prime,k_2^\prime\right)の組が,\left(k_1,k_2\right)のみであることを示せれば,必要十分である.
まず,n=0となるには,
\begin{cases}k_1-k_1^\prime=0\\k_2-k_2^\prime=0\end{cases}\Leftrightarrow\left(k_1,k_2\right)=\left(k_1^\prime,k_2^\prime\right)
が必要.
次に,n=1となるには,
\frac{k_1-k_1^\prime}{b_1}+\frac{k_2-k_2^\prime}{b_2}=1\Leftrightarrow\left(k_1-k_1^\prime\right)b_2+\left(k_2-k_2^\prime\right)b_1=b_1b_2\bigm\Leftrightarrow\left(k_1-k_1^\prime\right)b_2=\left(b_2-k_2+k_2^\prime\right)b_1\bigm\Leftrightarrow\frac{b_1}{b_2}=\frac{k_1-k_1^\prime}{b_2-\left(k_2-k_2^\prime\right)}
であること(b_1b_2は互いに素であるから,左辺は既約分数)と,1\leqq b_2-\left(k_2-k_2^\prime\right)\leqq2b_2-1<2b_2より,
\begin{cases}k_1-k_1^\prime=b_1\\b_2-(k_2-k_2^\prime)=b_2\end{cases}
が必要だが,k_1-k_1^\prime=b_1は不可.
よって,方程式を満たす\left(k_1^\prime,k_2^\prime\right)の組は存在しない.
以上より,方程式を満たす\left(k_1^\prime,k_2^\prime\right)の組は\left(k_1,k_2\right)のみである.
つまり,Q_1Q_2の異なる要素の組を掛け合わせたとき,その積に重複が生じる可能性はないことが示せた.
よって,
n\left(R\right)=b_1b_2……(答)
b_1b_2が互いに素でないとき
\begin{cases}b_1=db_1^\prime\\b_2=db_2^\prime\end{cases} (b_1^\prime,b_2^\primeは互いに素な整数)
と書ける.
\therefore\left(\cos{\frac{2k_1}{b_1}\pi}+i\sin{\frac{2k_1}{b_1}\pi}\right)\cdot\left(\cos{\frac{2k_2}{b_2}\pi}+i\sin{\frac{2k_2}{b_2}\pi}\right)=\cos{2\left(\frac{k_1b_2^\prime+k_2b_1^\prime}{db_1^\prime b_2^\prime}\right)\pi}+i\sin{2\left(\frac{k_1b_2^\prime+k_2b_1^\prime}{db_1^\prime b_2^\prime}\right)\pi}
上記の議論と比べれば,
n\left(R\right)=b_1^\prime b_2^\prime=\frac{b_1b_2}{d}……(答)

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